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2025年02月15日

そうだ 労役、行こう

判所から届いた封筒を子供たちの面前で開封し、私は宣告文を朗々と読み上げた。

主文、被告人を罰金15万円に処する。
この罰金を完納できないときは金5000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

長男が鼻で笑う。「安っすぅ」
長女が首を傾げる。「そんな額で済むの?」

妻は仕事で不在だった。

「15万てことは…1日5千円換算なら30日か・・・」
 私が呟くと、長男が即座に反応した。

「えっ?まさか労役行く気?!」

「えっ?ダメかな?」

「いやいや、それくらいなら俺が払うよ?」 長男がいう。

「ありがとう、でもそれくらいオレだってあるさ。ただ刑務所ってどんな所か興味あるし、そもそもお金が勿体ないと思わん?(笑)」

「マジで言ってんの!?」

「ほらよくさぁ、キャンプとかしてる人が不便さを楽しむとか言うじゃん。その一点においては究極のサバイバルだよ。」
 ※収容所のことを英語圏ではキャンプというコトバで表すことがある。

 隣で聞いていた長女も呆れ顔。

「なにその変な理屈?」

「オレも今年で還暦だし、この先普通に生きてりゃ収監される機会なんてないだろう?」
「それに最悪イヤになったら、罰金さえ払えばすぐ出られるみたいだよ(笑)」

「えぇー、そういう問題?」 長女がため息。

(愛する我が子らよ、最高の反応をありがとう!)
 私は心の中で笑いを噛み殺した。



これが私の労役留置決意の瞬間である。

といっても実は略式命令と知った時点で、なんとなくではあるがそうしようと考えていた。
税金と同様、罰金は払えば終わり・・・、ただの金銭的損失に過ぎない。
しかし刑務所という非日常空間は、なにかしら自分の人生に新たな気づきみたいなものをもたらしてくれるのではないかと思った。
それにどうしても嫌になったり、これ以上得るものはないと感じたら、残金さえ支払えば即日(翌日?)放免なのである。
言ってみれば、刑務所無料体験ツアーみたいなもの・・
いやいや、それどころか衣食住すべて整ってさらに日当(5000円/dayって安すぎん?)までもらえる。
会社には有給休暇で対応してもらえるので、いわばダブルワークということになる。

翌朝、私は洗面所の鏡に向かいながら考えた。
お気に入りの歯ブラシを手にした瞬間「ああ、これも持っていけないんだなぁ」と妙に現実味が湧いてくる。
スーツ姿で出頭するべきかカジュアルな装いが良いか、そんなどうでもいいことに頭が巡る。

後日妻は
「その歳(とし)で矯正体験なんて百害あって一利ナシなんじゃない?」
「ってゆーか、普通の人は恐がるところ(場所)でしょ?」
 と言っていた。

「恐怖心より好奇心が勝つんだよね」 ←(ここフリーレンっぽく) そう言って私は窓の外を見つめた。

人生最後の冒険ってやつかな・・・」




クリスマス目前、肌を刺すような冷たい空気が、不思議と心に沁みわたる朝だった。



そうだ 労役、行こう





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